ディズニーランドのハッピーサイクル研修+

「良い職場」のために今日からアナタができることは何ですか?

第四章 4-4

この本の目次

「良い職場」をつくるには、頑張ったことが褒められる環境をつくることが必要です。そのために「自分からできる、ちょっとしたこと」って何でしょう? どんなことをやっていったらいいのでしょうか。

「カードのキャンペーンをひとりで始めても、むしろキモチワルイよね……」

そうですね。先ほども申し上げたとおり、カードなんかを使った取り組みをひとりでやるには、カードなどの小道具を自分で準備しなくてはならないなど手間がかかるので、やっぱり会社やお店全体で始めないと難しいです。

でも、この「仲間を褒め、おたがいに認め合う」環境づくりって、カードがないとできないものでしょうか?

そんなことはありません。

大切なのは、カードを渡すことではなく、「カードを渡すことで実現したいことは何か?」ということ。これを見失わなければ、できることが見つかるはずです。

カードを渡すことで実現したいこと――、それって相手に「見てたよ、頑張ってるね! すごいね!」という気持ちを伝えることですよね。

だったらカードなんかなくたって、言葉で伝えたらいいじゃないですか。

「いまのご案内のしかた、私がお客さんだったら嬉しいよ!」とか、

「オススメを紹介したときのあのセリフ、私もマネしたいです!」というふうに。

「いやいやいや、それができない日本人だから困ってるんですよ!」

はい、おっしゃるとおり。いきなり相手を褒めようとしたって恥ずかしいし、実行するまでにかなり時間がかかりそうですね。

でも大丈夫、ちゃーんと段階を踏んでいけば、アナタも「褒めの達人」になることができます!

ディズニーランドでは「相手を直接褒める」ことができる人になるように、Dカードというツールを使って「相手を直接褒める」習慣を身につけていました。

では、「相手を直接褒める」習慣を身につけるために今日からアナタができることは、いったいどんなことでしょうか。《初級編》《中級編》《上級編》の3つの段階に分けて、見ていきましょう。アナタのスタート地点はどこからですか?


《初級編》

いきなり、自分の気持ちを自分の言葉にして、自分の口から伝えるのは、やっぱり照れくさいですよね。でも、「他の人が、他の人を褒めている様子を伝える」だったらどうでしょうか?

たとえば、Aさんがアナタに「Bさん、最近頑張ってるよねー」といってきたとしましょう。その話をアナタがBさんに「Aさんが、Bさんは最近頑張ってるって褒めてたよ!」と伝えるんです。つまり、AさんとBさんの中継地点になるってことです。

この褒め方だと、自分で考えた内容を伝えるわけではないので、とても気軽に伝えることができます。とても気軽なんですが、こうして中継地点となって褒めることを何度か繰り返しているうちに、アナタにとって素晴らしい効果を発揮します。

まず、当たり前ですが、お褒めの言葉を聴いたBさんは「うっそぉー!?」とかいいながらも、とっても喜びますよね。するとBさんのやる気がぐんとアップします。そのあとは、きっといつも以上に頑張って仕事をするBさんが、アナタの目の前にいるはずです。

これはつまり、「褒められると人は、こんなふうに喜んだり、やる気が出たりするものなんだ!」という様子を目のあたりにするということ。これを何度か経験すると、アナタはだんだんと「褒める」ことの底力を実感できるはずです。

「褒める」っていいことなんだなぁと、まずはアナタ自身が感じること。「褒める」こと自体を「素晴らしいことだ」と感じることが第一歩です。


《中級編》

「褒める」ことの底力を知ると、そろそろ自分の言葉で相手を褒めてみたいかも、私にもそれができるかも、という気がしてくるはずです。でも、

「いまのご案内のしかた、私がお客さんだったら嬉しいよ!」

「オススメを紹介したときのあのセリフ、私もマネしたいです!」

というように、具体的に何かを褒めるのは、まだちょっとハードルが高い……。

はい、無理する必要はありません。いきなりこんなに具体的に伝えるのではなく、まずはたったひと言、このセリフをいえるようになりましょう。

「ありがとう」

「褒める」となると、何を褒めたらいいか悩んでしまうことがよくあります。そんなときは難しく考えず、とりあえず「ありがとう」を口にできるようになりましょう。

ちょっとした手助けをしてくれたら「ありがとう」。

悩んでいるときに声をかけてくれたら「ありがとう」。

助かったな、嬉しいなと感じたら、すぐ「ありがとう」というんです。「ありがとう」は相手のしてくれたことを「認める」言葉ですから、これはもう立派な「褒め言葉」です。

ときには、どうしてもすぐに「ありがとう」という言葉が出ないときもあります。そんなときは、すぐじゃなくてもいいので、あとで必ず「ありがとう」を伝えるようにしましょう。そのときは、急にあらたまっていうのは恥ずかしいので、あいさつにまぜていうと気軽です。

「おつかれさま、さっきはレジ助けてくれてありがとう!」

「おはよう、昨日は心配してくれてありがとう!」

こうすることで、恥ずかしさを軽減するだけでなく、具体的に何に対して「ありがとう」と伝えたいのかまでいえるようになります。

ここまでくると、アナタには「褒める」ことへの理解だけでなく、「まわりのスタッフをよく観察する習慣」も身についていることでしょう。

次はいよいよ上級への扉を開きます!


《上級編》

さぁ、クライマックスです! 「褒めの達人」まであと一歩。

「相手を観察する・褒める・認める」習慣がついてきたアナタは、具体的に何が良かったのか、どんなことを褒めたいのかをある程度、口にすることができるようになっているはずです。

ただひとつ頭を抱えてしまうのは、「どんな基準で褒めたらいいの?」ってこと。

そう、問題はそこですよね。

でもその答えは、実は第3章ですでにお話ししているのです!

アナタが仲間を褒める基準は、「アナタのゴール」が決めてくれます。

「アナタのゴール」が「お客様から『ありがとう』といわれること」なら、お客様からよく「ありがとう」といわれる仲間に注目して、褒めポイントを探してみましょう。

「私がオススメしたものをお客様に買っていただく」がゴールだったら、オススメを買っていただけた仲間の言葉や対応方法を観察です。

「『アナタから買いたい』といってくれるお客様をつくる」だったら、お客様からの指名買いがあった仲間はどうやってそこまでたどりついたのか観察します。

こんな具合に、アナタが目指している「ゴール」を実現している仲間に注目するんです。そして、その彼・彼女がアナタの目指す「ゴール」を実現したとき、その「ゴール」により近づけるようなアクションをしたときが、褒めるときです。

このように、「アナタのゴール」と「良い職場」をつくることは、かなり密接な関係があったんですね。

「良い職場」をつくるために、まずアナタができること――、それは「仲間どうしが褒め合い、認め合う」関係をアナタからつくっていくことです。

そのためには、アナタが率先して仲間を褒めること。まずは誰かが褒めたことを伝える「中継地点」から始め、次にみずからの気持ちで「ありがとう」をいえるようになり、最終的には自分から積極的に相手の良いところを褒められるようになっていくこと。そのときの褒める基準は「アナタのゴール」にあります。

だから、まずは自分の「ゴール」を持って、アナタ自身が楽しく働くこと。次に、その「ゴール」を基準に仲間をどんどん褒めること。そうすることでスタッフどうしの雰囲気がよくなり、アナタだけでなく、仲間たちとやりがいや充実感、達成感を共有することができるようになります。それが「おたがいに高めあっていける良い職場」をつくることにつながるんですね。

誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分からできることをやってみましょう。

それが本当にサービスのお仕事を楽しむための秘訣なんですよ。

レッツ・トライ!!

2026年の補足

褒め合い・認め合う話の締めに、私のいちばん好きなエピソードを。東京ディズニーリゾートには「サンクスデー」という一日があります。閉園後のパークを貸し切り、今度は役員や社員がキャスト役になって、日ごろ現場を支えるキャストたちを"ゲスト"として迎え、もてなす——年に一度の、感謝の夜です。直近では2026年1月に、東京ディズニーランドとディズニーシーの2つのパーク合同という、初めての形で開かれました。トップから現場まで「ありがとう」を伝え合う。本文の《初級編》に出てくる、あの小さな「ありがとう」の、いわば会社まるごと版ですね。感謝は、どの立場からでも贈れるんです。