この章も、いよいよ締めの項です。ここでぜひ、「アナタのゴール」を決めましょう!
ポイントは、「わかりやすい言葉で、覚えやすい長さ」です。
鍵となるのは、「アナタがサービスパーソンとしてお店に立っているとき、どんな瞬間がいちばん嬉しいか。どんなときにやりがいを感じるか」です。
ではまず、仕事をしていて嬉しかったり、やりがいを感じるシチュエーションを想像してみましょう。
・お客様から「ありがとう」といわれた!
・私がオススメしたものを買っていただけた!
・オーダーを1度も間違えなかった!
・お客様に笑顔を褒められた!
・お客様が「アナタから買いたい」といってくれた!
パッと思い浮かぶだけでも、嬉しさややりがい、達成感を感じる瞬間って、いろいろありますよね。これこそが「アナタのゴール」を見つけるヒントです!
シチュエーションが想像できたら、次は「そのシチュエーションを巻き起こすには、どんなアクションをしたらいいか?」を考えてみます。
たとえば、お客様から「ありがとう」といわれるためにはどうしたらいいか? これは、自分が「ありがとう」と人にいうのはどんなときだろう?と考えてみると、見えてくるのではないでしょうか。
私だったら、大袈裟なことでなくても、ちょっと困っているようなときに相手が気づいて手を差し伸べてくれたら、自然と「ありがとう」って出るかなぁ。
てことは、お客様も、ちょっと困っているときにスタッフに手を差し伸べられたら「ありがとう」っていうかもなぁ。
だとすると、小さなことに気づけるスタッフは「ありがとう」っていわれることが多いんじゃないかぁ。
……こんな具合に、お客様が「ありがとう」といってくれる瞬間にはなにが起きているか、その瞬間はなぜ生まれるのかを想像するんです。
すると「小さなことに気づく」というヒントが出てきました。そこで、
「お客様をよく観察する!」
なんてゴールはどうでしょう? お客様のことよく見ていないと、「ありがとう」の言葉をいただける瞬間を逃してしまいますね。
でも、これだけだとちょっとぼんやりしていて、具体的ではありません。
「ゴール」を決めるときのポイントは、「わかりやすい言葉で、覚えやすい長さ」だとお話ししました。でも実はもうひとつ、重要なポイントがあります。それは、
「『ゴール』を達成した自分を褒める!」こと。
この章の初めにお話ししたこと、覚えていますか?
――「ゴール」を持つことで、「今日はよくやったな」とか「こういう対応がもっと上手になりたいな」とか「思い切りやったのがよかったな」というように、自分を褒めたり注意したりする基準ができます。なりたい(または、あるべき)姿の基準があるから、すべきことが明確になり、やる気をおこすことができるのです――
とお話ししました。
つまり、ゴールテープを切った瞬間「やった! 私よくやった!! この調子で次も頑張ろう!」と、日々の仕事へのやる気や楽しさを見いだすために「ゴール」は存在していなければいけません。だからこそ、具体的に決めたほうがいいんです。そのほうが、自分を褒めるときにも褒めやすいですし、失敗したときには反省しやすいからです。
それでは、先ほどのゴール「お客様をよく観察する!」を具体的にしてみましょう。たとえば目標を設定して、
「『ありがとう』を1日10回以上いわれる! そのためにお客様をよく観察!!」
とするのはどうでしょうか。
ただ「観察する」だけでは、それがサービスの仕事に役立っているのか、お客様に喜んでもらえているのか、判断に困ってしまいます。
でも、その結果10回以上「ありがとう」の言葉を聞くことができたなら、それは「観察することで、お客様が喜んでくれるサービスができた」ことの証と考えてもよさそうです。ということは、ちゃんとお客様に喜んでもらえたのだから自信を持って自分を褒めることができますし、今日の自分のサービスに満足だってできますよね。
逆に10回に満たなかったら、明日はクリアできるよう「観察する」時間やポイントを変えてみよう、といった工夫やアイデアも考えやすくなります。
それに、お客様に「ありがとう」といわれることは最初に書いた、アナタにとって「嬉しいし、やりがいを感じるシチュエーション」のひとつです。そのシチュエーションをつくる、つまり「自分が幸せになる」ために「観察する」わけでもあるのですから、それを実現するための工夫や努力も、納得して、やる気をもって取り組めるはずです。
このようにして、先ほどあげた他のシチュエーションについても、おなじように考えてみましょう。
私がオススメしたものをお客様に買っていただくためには、どうしたらいいんだろう?
オーダーを間違えないようにするには、どうしたらいいんだ?
お客様に笑顔を褒めてもらうには、どうすればいいかな?
「アナタから買いたい」といってくれるお客様をつくるために、なにができるだろう?
……というように、アナタが仕事をしていて「嬉しい、やりがいを感じる」シチュエーションを巻き起こすにはどうしたらいいのか考え、そのためのアクションを決めるんです。そして、その目標を具体的にして「自分を褒める基準」を設ける。
このステップで「アナタのゴール」が見えてきます。
大切なのは、アナタがサービスの仕事を「楽しい!」と感じられる状態をつくりだすことです。
そして、その「楽しい状態」の実現がどのくらいの数や期間できたら「自分を褒めてもいい」ことにするかを決め、実現のためにすべきアクションを決めること。
それを「わかりやすい言葉で、覚えやすい長さ」で表現すること。
これが「アナタのゴール」となるのです。
アナタをいちばんよく見ているのは、ほかでもなくアナタ自身!
明日もサービスの仕事を楽しんでできるどうか、そのやる気を起こせるかどうかの鍵を握っているのは、いつもアナタ自身であることを忘れないでくださいね。
+2026年の補足
「わかりやすい言葉で、覚えやすい長さ」で——というこの回。アメリカの本家ディズニーランドに、ウォルトが残した"ある短い言葉"があります。1955年の開園日に彼が読み上げた献辞で、冒頭はこう始まるそうです。「このしあわせな場所を訪れるすべての人へ、ようこそ」。難しい理念も数字もなく、たったこれだけ。だからこそ70年以上たった今も、園内の銘板に刻まれ、語り継がれています。長く大切にできるゴールは、たいてい短い。あなたの「ゴール」も、肩の力を抜いた一言で、いいのかもしれませんね。
川崎真衣