トゥーンタウンをあとにして、今度はディズニー映画の主人公に出会える夢と童話の世界「ファンタジーランド」へ来ました。
ところで、ピノキオのお話って知ってますか?そうです、嘘をつくと鼻が伸びちゃう、あのピノキオです。ディズニーアニメで有名なお話ですが、あの作品が好きで何度も繰り返し見ているとかでないと、細かい内容までは覚えていないですよね。ですので簡単におさらいしておきましょう。
人形職人のゼペット爺さんは、木の操り人形をつくり、ピノキオと名づけました。
子供のいないゼペット爺さんは、ピノキオが自分の子供だったらどんなにいいだろうと思い、この人形に魂をくれるよう、星に願いをかけました。するとその願いが届いたのか、夜遅くにブルー・フェアリーが現われ、ピノキオに生命を授けたのです。そしてピノキオに「正直で優しい性格になれば、人間になれますよ」と告げて、去っていきました。
夜が明けて、生命を授かったピノキオを見たゼペット爺さんは大喜び。よい子に育つようにとピノキオを学校へ送り出しました……。
ここまでは思い出しました?今回重要なのは、この先です。
いつか人間になりたいと思うピノキオですが、彼には良心というものが何かわかりません。そこでコオロギのジミニー・クリケットが必死で良心を教えようとしましたが、聴く耳を持ちません。そのため、ずるがしこいキツネとネコにだまされて、「ストロンボリー」という人形芝居一座の親方に売り飛ばされ、糸なしで動く操り人形として見せものにされてしまいました。
やっとのことで人形芝居一座から逃げ出したピノキオですが、家に帰る道中でまた、ずるがしこいキツネとネコにだまされて、今度は子供が自由に遊んで暮らせる「プレジャーアイランド」に連れていかれます。ここでピノキオはたくさんの悪いことを覚え、それを楽しむようになりました。ところがある日、悪いことをすると自分がどんどんロバになっていくことに気づきます。実はここは、そうしてロバになってしまった子供たちを最後には売り飛ばしてしまう、恐ろしいところだったのです……。
と、知っていただきたいのはここまで!このあとピノキオがどうなったのか、そしてこの物語のクライマックスは!?それはぜひ、DVDでご確認ください。
さて、話をディズニーランドに戻します。
ファンタジーランドには、「ピノキオの冒険旅行」というアトラクションがあります。ディズニー映画『ピノキオ』の物語を、トロッコに乗りながら体験できるアトラクションで、ディズニーランドのオープン時からあるものです。
ですが今回は、そのアトラクションそのものではなく、アトラクションのまわりにあるショップに注目していただきたいのです!
ピノキオのアトラクションのすぐ近くには、キャラクターグッズを販売しているワゴンと、キャンディの装飾が可愛らしいお菓子屋さんがあります。このワゴンの名前を『ストロンボリーズ・ワゴン』、お菓子屋さんの名前を『プレジャーアイランド・キャンディーズ』といいます。
あ、ピンと来ました!?
そうなんですよ。ワゴンとお菓子屋さんには、ピノキオの作品中に登場する名前が使われているんです。つまり、このショップの背景、バックグラウンドストーリーはこうです。
『ストロンボリーズ・ワゴン』は、人形芝居一座の親方・ストロンボリーの手下がお店を切り盛りしています。素敵なキャラクターグッズを売っていますが、それにトリコになったお客様は芝居小屋に連れていかれ、親方にこき使われてしまいます!
キャストは、そんなストロンボリーの悪事がバレないよう、お客様に商品を楽しんで買ってもらわなければなりません。そのために笑顔で接客しています。
おなじく『プレジャーアイランド・キャンディーズ』も、甘いお菓子と可愛らしいディスプレイでお客様を誘惑し、トリコにしようとしています。もちろん、その罠にはまったらロバにされ……。そのたくらみがバレないように、素敵な笑顔で接客します。
このストーリーを知っているお客様は本当にごくわずかだと思います。お客様にとっては、どちらも素敵なグッズやお菓子を扱っているショップにすぎません。
しかし!働くキャストにとってはどうでしょうか。このバックグラウンドストーリーがあるのとないのとでは、働く意欲や笑顔の意味が変わってきますよね。
バックグラウンドストーリーは一見、お客様をワクワクさせるためのように感じるかもしれません。でも実は、働くスタッフのためなのです。ここがいちばん重要です。
それに、トゥーンタウンのような壮大なストーリーでないと「バックグラウンドストーリー」と呼べないか?というと、そうではありません。このワゴンとお菓子屋さんのように、お客様がぜんぜん気にしないほどの小さなストーリーでも、それがあれば、働くスタッフにとって、お客様をお迎えするうえでの大切な心構えになります。
これが、バックグラウンドストーリーの真髄です。どうでしょう、だんだんアナタの中にも浸透してきたでしょうか。
おや?どうしても気になることがあるようですね。
「そりゃ、かたちだけじゃない、意味のある笑顔かもしれないけどさ、なんだかんだいって、結局〝笑顔が大事〟ってことなんじゃん!」
おー、たしかに。それは失礼致しました。
それでは次に、こんなバックグラウンドストーリーはいかがでしょう。
サンリオピューロランド、東京ディズニーランドの元キャスト。
「まずは自分からサービスを楽しみ、お客様へその楽しさを伝えることで、お客様から感謝の気持ちが返ってくる」=『ハッピーサイクル』という考え方を組み立て、研修、講演、コンサルティングや書籍の執筆を通じて、全国のサービス現場へ広げる活動を行っています。おかげさまで、現在までにハッピーサイクルの考え方を学んだ受講生の人数は、延べ2万人を超えました。