「ディズニーランドで働いているキャストが目指してる『ゴール』……、それってきっと、そりゃもうハードルの高いものなんだろうなぁ……」
これは、私がディズニーランドに入社したときに受けた研修の最中に思っていたことです。仮にも日本一と称されるテーマパークで働くわけですから、それなりの覚悟はしていましたが、
「オラオラオラァ〜!声が小さいっ!もっとキビキビだ!!働け働けぇぇー!」
みたいなことになったらどうしよう……、と思わなかったわけでもありません。
そんなことをモンモンと考えている私の不安をよそに、研修では、担当のトレーナーさんが「ゴール」についての説明を始めました。
「これからキャストが目指す『ゴール』についてお話しします。これはキャストでいるかぎり、全員で目指していかなければならないものです。しっかり覚えましょう!」
そして「私たちキャストが目指す『ゴール』は、こちらです!」といいながら、トレーナーさんが力強くホワイトボードに貼り出した「ゴール」とは、
【すべてのゲストにハピネスを提供する】
えっ!?
これだけ?
こんな普通のことなの??
これが私の正直な感想でした。
アナタはどう思います?当たり前すぎるって思いません?
サービス業に携わる者ならば、そして接客サービスの仕事が好きな人ならば、誰もが考えたことがあるでしょう。
お客様に幸せになってもらうこと、そのために私たちスタッフがいるのだと。
お客様が幸せを感じてくれるから、私たちスタッフは仕事にやりがいを持てるのだと。
そんなこと、サービスパーソンなら当たり前。わざわざでっかく書いて貼り出すほどのものとは思えません。
でも、こんな当たり前のことを、日本一のテーマパークが、働くスタッフ全員の最終目標=「ゴール」として掲げているんです。このことに、私は心底驚きました。
しかし!これが実はとても大切なことだったのです。
「当たり前のこと」が「ゴール」であること。
これは、こう考えることもできます。
「接客サービスやスタッフ教育が素晴らしいといわれる日本一のテーマパークは、当たり前のことを徹底して行なって日本一になったのだ」
どうでしょう。衝撃ですね!
このメッセージは、
「当たり前のことをおろそかにしてはいないか?」
という警告だと捉えることもできます。目の前につきつけられると、少しドッキリしてしまいます。
こういうふうに考えると、
【すべてのゲストにハピネスを提供する】
という、このゴール、すごく納得できるように思えてきます。
「うん、わかった!だったら私もいまからすぐ、初心に帰るつもりで、この『ゴール』を心に留めて、ディズニーランドのキャストのように、お客様の幸せのために頑張る!」
おや、「ゴール」が明確になって、急に目の前が明るくなったようですね。晴れ晴れとした気分になって、早く仕事にいきたいなぁと感じているかもしれません。
せっかくのそんなアナタの気分を邪魔をしたくはないのですが、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
【すべてのゲストにハピネスを提供する】
これ、非常にわかりやすくて、いい言葉だと思うのですが、実現するの、難しいと思いませんか?具体的にどうしたら、お客様にハピネスを提供することができるのでしょうか。それも、すべてのお客様に!
ここで「うーん」と考え込んでしまうとしたら、それは「ゴール」としては不適切です。なぜなら「ゴール」は、アナタがイキイキとやる気を持ってお仕事にのぞむための、エッセンスのひとつだからです。ですから、納得がいかないものだと意味がなくなってしまいます。
そうやって考えると、これってかなり奥が深い「ゴール」です。
この本を読んでいるということは、おそらくアナタはディズニーランドのキャストではないのでしょうから、この「ゴール」をそっくりそのまま目指す必要はありません。
ですが、ディズニーランドのこの「ゴール」を読み解いていくことは、「アナタ自身のゴール」を見つける手がかりになるかもしれません。
ディズニーランドのキャストが目指す「ゴール」は「すべてのお客様に幸せを感じてもらう」という、サービスパーソンにとってはとても当たり前のこと。
同様に、この「ゴール」を達成するためのヒントも、実は当たり前のことばかりです。
では、どんな「当たり前」が大切なんだ?
サービスパーソンとしての「初心」を思い出しながら次へGO!
サンリオピューロランド、東京ディズニーランドの元キャスト。
「まずは自分からサービスを楽しみ、お客様へその楽しさを伝えることで、お客様から感謝の気持ちが返ってくる」=『ハッピーサイクル』という考え方を組み立て、研修、講演、コンサルティングや書籍の執筆を通じて、全国のサービス現場へ広げる活動を行っています。おかげさまで、現在までにハッピーサイクルの考え方を学んだ受講生の人数は、延べ2万人を超えました。