ここまで第1章、第2章と読んできて、アナタはどう感じたでしょうか。
「なるほどねー。それだけ綿密につくられた施設と、しっかりとしたバックグラウンドストーリーが用意されてるんだったら、そりゃあキャストだって、やる気になるよねー!」
と思った方、はい、半分正解!
たしかに、これだけガッチリ用意された場所で働くわけですから、無条件にやる気も出てくるってもんです。
でもね、ちょっと違うんだなぁ。それだけじゃない。
たしかに施設やバックグラウンドストーリーは、キャストの原動力になっています。これは間違いありません。
ですが、それだけで2万人もいるキャスト全員が、いっせいに「おっしゃぁぁーー!やるぞー!!」となれるかというと、そうはいきません。
だって、2万人ですよ!2万人といったら、あの日本武道館の収容人数より多いし、両国国技館だったら2個分の人数です。すごい数。
それだけの人数のキャストがみんなイキイキと働けるには、施設やバックグラウンドストーリーのほかにも、やっぱり秘密があります。
それは、キャストには目指す「ゴール」があるということ。
「ゴール」とは、どんなことに向けて働くかを言葉にした最終目的のことです。
「そんなこと!?」と思われるかもしれません。でも、これってとても重要ですよ。
だって、「ゴール」を持たずに仕事をするのって、たとえば距離の決まっていないマラソン大会に目隠しで参加するようなもの!!それでは、どこまで走ったらいいのかわからないし、給水ポイントも見えない、そもそもこの道で合っているのかすらわかりません。こんなマラソン大会、出場してもつらいばかりだし、いつ終わるのか、最後まで走りきれるのかもわからないので、まったくやる気がおきませんよね。
マラソンは、最初からきちんと「ゴール」が決まっているから、最後まで走りきるためのペース配分を考えることができます。自分のペースを把握して、「今日はいいペースだな、これならこのくらいのタイムでゴールできるな」と計画を立てることもできるし、まわりの状況を見ながら「上位○人までに入りたいから、もう少しペースを上げよう、あそこまで行ったらラストスパートだ!」と、たんにゴールするだけではない、さらに上の「目標」を達成するために頑張ることだってできます。
こうやって、ゴールにつくまで「やる気」をキープすることができるんです。
接客サービスの仕事も、これとまったくおなじです。
サービスパーソンとして、どうなりたいのか、どうありたいのか。こうした「ゴール」を持つことで、「今日はよくやったな」とか「こういう対応がもっと上手になりたいな」とか「思い切りやったのがよかったな」というように、自分を褒めたり注意したりする基準ができます。なりたい(または、あるべき)姿の基準があるから、すべきことが明確になり、やる気をおこすこともできます。
そしてディズニーランドのキャストは、みんな「ゴール」を持っています。だからイキイキと、やる気を持って仕事にのぞむことができるんですね。
とくに接客サービスの現場では、スタッフがイキイキと楽しく働いていることが大事です。やる気のないスタッフが、お客様をワクワクさせることなんてできませんから。
だからこそ、やる気をになう「ゴール」を持つこと。それがアナタのやる気をさらに引き出し、お客様のワクワクを作ることにつながるんです。
「う、たしかに目標とかゴールなんて決めたことないし、考えたこともなかったなぁ」
と思ったアナタは素晴らしい!!
今日それに気づいたことが、もっと楽しく働くための大きな一歩です。ラッキー!
って、ここまでさんざん引っ張ってきましたが、まだディズニーランドのキャストたちがどんな「ゴール」を持っているのかを、お話ししてませんね。それは次の項から見ていくことにしましょう。そしてアナタにとっての「ゴール」についても一緒に考えていきましょう。
サンリオピューロランド、東京ディズニーランドの元キャスト。
「まずは自分からサービスを楽しみ、お客様へその楽しさを伝えることで、お客様から感謝の気持ちが返ってくる」=『ハッピーサイクル』という考え方を組み立て、研修、講演、コンサルティングや書籍の執筆を通じて、全国のサービス現場へ広げる活動を行っています。おかげさまで、現在までにハッピーサイクルの考え方を学んだ受講生の人数は、延べ2万人を超えました。