ディズニーランドのハッピーサイクル研修+

今度は、おなじく「ファンタジーランド」の中にある「ホーンテッドマンション」というアトラクションにやってきました。

ここはディズニーランドの中で唯一の、お化け屋敷要素の強いアトラクションです。ここにはどんなバックグラウンドストーリーがあるのでしょうか。

レンガ造りのゴシック風洋館に住んでいるのは、世界中から集まった999人の幽霊。彼らはここで1000人めの幽霊候補者を探すために、毎日楽しいパーティを繰り広げています。しかしそこは幽霊の考えること。幽霊にとっては楽しいパーティでも、人間から見ると怖いだけ!なのにそんなパーティを楽しんでしまった人間は、幽霊に気に入られ、連れ去られてしまうかもしれません。

こんな具合です。

では、ここにいるキャストの役割は何でしょうか。

ホーンテッドマンションのキャストは、幽霊に雇われている執事とメイドです。そして彼らは、屋敷内では笑顔を禁止されています。

禁止の理由はとっても簡単です。ちょっと想像してみてください。

ドキドキはらはらで足を踏み入れた幽霊屋敷。高まる鼓動を抑えながら奥へと進んだら、出会ったメイドさんに、

「はいっ!こんにちわ〜!2名様ですねっ♪お足元には充分ご注意くださいね☆あらっ、カワイイお洋服デスネ!」

なんて笑顔で対応された……。

どうでしょう?興ざめですよね。逆に怖いかもしれませんが、ストーリーにまったく合っていないません。

幽霊に雇われているメイドですから、やっぱりここは笑顔ではなく、むしろ表情のあまりない、陰気で不気味な感じのほうが似合います。だからキャストは笑顔を禁止されているのです。

つまり、禁止の理由は「ストーリーを壊さないため」なんですね。

実際、キャストに笑顔がなくても、

「なんだよ!おまえ無愛想だなぁ!!」

と怒るお客様はいません。それはキャストが「ストーリーの一部」になっているからです。

どうでしょう。

「なんだかんだいって、結局〝笑顔が大事〟ってことなんじゃん!」

という疑問は解消されたでしょうか。

お客様に接するときには「笑顔が絶対」、なのではありません。笑顔になることでストーリーが壊れるなら、たとえお客様の前でも笑顔にならないほうがいいのです。

むしろそのほうがお客様にとって「サービス」になることもあるということが、このバックグラウンドストーリーから感じていただけたのではないかと思います。

たとえが「お化け屋敷」では、ちょっと極端だったかもしれませんね。でも、こうやって考えてみると、サービスパーソンが笑顔でいたほうがいい理由も逆にイメージしやすいんじゃないかと思うんです。

ただなんとなく「笑顔のほうが感じがいいから」ではなく、「どうして笑顔が必要なのか?」「どんな笑顔が必要なのか?」「そこにはどんな理由があるか」を、ぜひ考えてみてください。それができるようになったらアナタも「心のディズニーランド」の立派なキャストです。

アナタのお店には、笑顔が必要でしょうか?

必要だったとして、それはどんな笑顔ですか?

元気な笑顔、ホッとする笑顔、お上品な笑顔などなど、単純に「笑顔」と考えただけでもさまざまな表現がありますよね。

おなじ「笑顔」でも、友達どうしで気軽に飲みにいく居酒屋と、記念日などに大事な人と訪れるフレンチレストランでは、店員に求められる笑顔のかたちは違うはずです。休暇を楽しみに来る家族連れのお客様を積極的に受け入れる観光地のホテルと、全国各地を飛び回る忙しいビジネスパーソンが心と体を休めるオフィス街のホテルとでは、お客様に向ける笑顔の意味が違うはずです。

その鍵を握るのが、バックグラウンドストーリーなんです。

ここまで、ディズニーランドのバックグラウンドストーリーをいくつか見てきました。どうでしょう?アナタが働くお店のバックグラウンドストーリーは見えてきましたか。

もちろん、ディズニーランドのように、そのバックグラウンドストーリーだけで映画が1本つくれてしまうような壮大なストーリーは、なかなか見つけられないでしょう。それは当然です。

だからといって、

「私のお店にバックグラウンドストーリーなんてあるわけない!」

とあきらめてしまうのは、ちょっと待ってください。

なにもね、そこまで物語チックに考える必要はないんです。

それに、アナタのお店にも、きっとバックグラウンドストーリーはあるはずです。

では、どうやったらお店のバックグラウンドストーリーを見つけることができるのか。

その答えは、意外と身近なところにあります。